2017年の4月7日に公開されるハリウッド版の攻殻機動隊。その前に久しぶりに押井守版の攻殻機動隊を見返したくなったので久しぶりに見てみました。

スポンサードリンク

初見ではよく分からなかった押井守版「攻殻機動隊Ghost in the Shell」

1995年に公開された押井守版攻殻機動隊。原作は士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」。押井守監督の演出だけでなく作画的にも非常にレベルの高い作品で、日本を代表するアニメーターが数多く参加しています。

電脳、義体、光学迷彩、ゴースト、実体のないハッカー、荒廃した香港のような街並みなど独特の世界観やキャッチ―な映像が続くので内容がよく分からなくても最後まで見れてしまいます。しかし1回観ただけではだけでは観終わった後、人から「どんな話だった?」と聞かれてもうまく答えられないという人がほとんどじゃないでしょうか?。僕は最初さっぱりでした。

原作はわりとシンプルな勧善懲悪物だったと記憶しているんですが、劇場版ではいつもの押井節が炸裂する政治色の強い作品に仕上がっています。攻殻機動隊はのちに続編やテレビシリーズなども制作されていますが、すべてが一貫した時間軸と設定の上で展開しているわけではないのでまとめて考えないほうがいいです。

とりあえずここでは1995年公開の攻殻機動隊に絞って話をします。

攻殻機動隊 Ghost in the Shell の世界観

第3次、第4次世界大戦後の2029年の日本を描いた作品。国境を越えて通信ネットワークが発達し、脳から直接ネットにアクセスすることを可能にする電脳化、自らの身体能力を強化する義体化(サイボーグ化)なども一般化した世界。それにともない特殊化・複雑化していく犯罪に対抗するため組織されたのが公安9課、通称「攻殻機動隊」である。9課は内務省公安部内に設置された首相直属の組織で超法規的な活動を行う秘密組織である。

攻殻機動隊 Ghost in the Shell の主な登場人物

草薙素子[少佐]
公安9課所属。全身を義体化(サイボーグ化)している。少佐と呼ばれているのは戦争当時からの仲間が多いため。
バトー
公安9課所属。全身を義体化(サイボーグ化)している。レンジャーあがりの肉体派。
トグサ
公安9課所属。電脳化はしているが体はほぼ生身。刑事上がりで草薙にスカウトされ9課に所属。スカウトの理由は劇中で明らかにされる。
イシカワ
公安9課所属。情報戦を得意とし、劇中では現場よりネットでの情報収集で活躍。戦争中からの草薙の部下である。
荒巻大輔
公安9課所属で9課の部長。
中村部長
公安6課所属。人形遣い(プロジェクトコード2501)を使い非合法な情報収集を行っていた。人形遣いがゴースト(意思)を持ち逃亡したことから非合法活動であるプロジェクトの発覚を恐れ回収を急いでいる。
ウィリス博士
プロジェクト2501のリーダーである科学者でAI研究の第一人者。中村部長とともに9課を訪れる。
台田
プロジェクト2501のメインプログラマー。冒頭のシーンでガベル共和国の外交官と亡命を企てていたところを6課と9課に踏み込まれてしまう。
人形遣い
外務省が各国の外交に横やりを入れるため、作成したプログラムで「コード2501」。広大なネットの海で、本来の仕事の一つである情報収集で、膨大な情報と接するうちに自我が目覚めた。

攻殻機動隊 Ghost in the Shell のあらすじと解説(ネタバレ含む)

本編を一度見ているという前提でネタバレを交えながら内容をおっていきます。なお作中のゴーストはその都度、魂・自我・自己意識などと表現しています。

草薙素子のビル襲撃

高層ビルの一室でガベル共和国の外交官が、外務省の認定プログラマー台田を自国へ亡命させようと引き抜き工作を行っていた。台田はプロジェクト2501のプログラマーでもある。そこへ中村部長率いる公安6課が踏み込む。認定プログラマーの国外への引き抜きは武器禁輸措置に抵触するため、中村部長は台田の引き渡しを要求するがガベル共和国の外交官はこれを拒否。台田はガベル共和国への亡命を希望をしており、それは受諾され宣誓書にもサインしているため国際法に基づき彼を保護し連れ帰る権利を有すると主張。

ガベル共和国の外交官には外交官免責特権もあり、亡命を希望する台田の宣誓書も大使館にあるため手が出せなくなった6課の中村部長だったが、光学迷彩をまとった公安9課の草薙素子が窓を破って外交官を狙撃。間一髪で台田の亡命を阻止した。

解説

有名な草薙素子の光学迷彩を使ったビル襲撃シーン。台田はプロジェクト2501のメインプログラマーです。外務省は米国・ニュートロン社と組んでウィリス博士を中心としたプロジェクト2501というプログラムを制作していました。プロジェクト2501は企業探査、情報収集、政治工作などの非合法活動を目的としたハッキング・プログラムです。

外務省のプロジェクト2501を使った非合法活動の証拠隠滅のため台田の亡命を阻止したい公安6課(外務省管轄)ですが相手の外交官がいるため手を出すことができません。6課は表向きの組織であるため強硬策はとれないのです。そこで超法規活動を得意とする秘密組織9課を使って(騙して)襲撃させ外交官を暗殺することで台田の亡命を阻止に成功します。

荒巻の外務省訪問

9課部長荒巻は外務省を訪れ外務大臣にガベル共和国との秘密会議について尋ねる。ガベル共和国の革命後の新政権からのODA再開の申し出があったことを明かす。悩みの種は亡命を希望して滞在しているガベル共和国の前軍事政権指導者マレス大佐の扱いだった。マレスの亡命を断り援助の話を進めるか、マレスの亡命を公式に認めて援助を断るか。大臣は世論が納得する明確な理由があれば今すぐマレスを強制送還したいという。

解説

ここのシーンがちょっとわかりにくかったので解釈が間違ってるかもしれません。

冒頭のビル襲撃シーンでガベル共和国外交官とプログラマーの台田の会話からすでにガベル共和国はプロジェクト2501と人形遣いについて知っていることが分かります。(会話内では人形遣いを「バグ」と呼んでいる)非合法活動のためのプロジェクト2501の存在の露見は当然国際問題に発展します。外務省はガベル共和国に弱みを握られていることになります。

ガベル共和国へのODAというのは名目上で、要するに口止め料なのだと思います。このためODAを断るという選択肢はありませんが難しいのはマレスの扱いです。ODAを支払う以上マレスの亡命を断る必要がありますが、マレスをいったんは亡命者として受け入れている以上追い出すには世論が納得する明確な理由が必要です。そこで外務省はマレス大佐を犯罪者に仕立て上げ国外追放するというストーリーを思いついたのだと思います。

演出的にも面白いこのシーン。エレベーター内での会話のシーンというのはパトレイバー2でもやっていました。人物は動かず会話と背景の微動だけで数分持たせます。走る車内での会話やレイバー内のレイアウトなど狭い空間内の芝居に興味があるらしく随所に散見されます。

外務大臣の通訳の電脳ハッキング事件

外務大臣の通訳の電脳に人形遣いがハッキングを仕掛けてきた。人形遣いは昨年からEC圏で出没していたすご腕のハッカーである。国籍推定アメリカだが年齢性別経歴すべて不明。株価操作・情報収集・政治工作・テロ・電脳倫理侵害・その他十数件の容疑で国際手配中の犯罪者で、不特定多数の人間をごストハックして操る手口からついた「人形遣い」というコードネームがついた。

人形遣いの目的は、亡命を希望しているマレス(ガベル共和国の旧軍事政権指導者)と外務省の極秘会談の妨害であると推測した9課部長の荒巻は外務省関係者に網を張っていた。ただちに逆探知を開始して人形遣いを追う草薙・トグサ・バトーだったが、逮捕した実行犯の清掃局員と廃品利用業者は人形遣いに操られていただけだった。

清掃局員と廃品利用業者は人形遣いにゴーストハック(洗脳)され偽の記憶を植え付けられていた。清掃局員は独身のはずなのに別居中の妻と溺愛する娘がいるという設定。ただのチンピラだった廃品利用業者は過去に難民系の武力闘争系組織に所属していて、その経歴を買われててガベル共和国政府の大使館付武官に秘密会談を襲撃するように依頼を受けたという設定。

愛していたはずの娘は存在しない。喪失感に苦しみ偽りの記憶を消すことはできないのかという清掃局員に、取り調べを行うトグサはかける言葉がない。清掃局員をみつめる草薙は何を思うのか。

解説

全身を義体化したサイボーグである草薙が自分のことをどう考えているのか、トグサとの会話の中で逆説的に表現されています。なぜサイボーグの集団である公安9課に本庁の刑事あがりの(しかもほぼ生身)自分をスカウトしたのというトグサの問いに草薙は答えます。

戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるのは緩やかな死。

トグサへの質問に答えているようで全身サイボーグである自分自身が抱える悩みを吐露しています。自分が同じスペックで製造された工業製品であるならば自分と他人を隔てるのは何なのか。そもそもサイボーグに「自分」など存在するのか。人形遣いに操られていた清掃局員のように自分も誰かに操られているだけではないのか。

有名な光学迷彩を着た草薙とコーギーの水上格闘シーン。格闘だけなく水の表現が素晴らしく、原画を担当した沖浦啓之氏は後に監督する「人狼」においてさらにその表現を進化させます。人狼もおススメの映画です。

非番中のダイビング 草薙が海に潜る理由

非番中、海へダイビングする草薙をあまりいい傾向じゃないとたしなめるバトー。全身サイボーグという重い体では、いざというとき自力で浮上することができないのだ。「海面へ浮かび上がるとき今までとは違う自分になれるんじゃないかそんな気がすると気がある」という草薙の言葉に9課をやめたいのかと問うバトー。サイボーグ化した自分を自分たらしめるものは何なのか。海上の船の上で2人の電脳に何者かがささやく。草薙はさらに物思いにふけるようになる。

解説

草薙のセリフに彼女の悩みが表れています。自身がサイボーグであることについては、

それが可能であればどんな技術でも実現せずにはいられない。
人間の本能みたいなものよ。

代謝の制御、知覚の鋭敏化、運動能力や反射の飛躍的な向上、情報誌処理の高速化と拡大、電脳と義体によってよってより高度な能力の獲得を追求した挙句、最高度のメンテナンスなしには生存できなくなったとしても文句を言う筋合いじゃないわ

と言いつつも、

人間が人間であるための部品が決して少なくないように自分が自分であるためには驚くほど多くの物が必要なの。他人を隔てるための顔、それと意識しない声、目覚めの時に見つめる手、幼かった頃の記憶、未来の予感。

それだけじゃないわ。私の電脳がアクセスできる膨大な情報やネットの広がり。それらすべてが私の一部であり、私という意識そのものを生み出し、そして同時に私をある限界に制約し続ける。

と、何を持って自分は自分であるのかを海に潜りながら考えていることがうかがえます。

捕獲された人形遣い

義体製造メーカーであるメガテクボディ社の生産ラインが勝手に稼働して義体をくみ上げ、係員が駆けつける前に逃走。深夜の高速道路でトラックにはねられ9課に持ち込まれるという事件が発生。

回収された義体を調べてみると完全なサイボーグであるはずなのに補助電脳の中にゴースト(魂)らしきものが存在するという。草薙やバトーの暗い表情の意味が理解できないトグサだったが、9課の義体は草薙やバトーをはじめとしてすべてメガテクボディ社であることを知らされる。サイボーグだけの存在がゴーストを持つとしたらもしかして自分も義体と人工知能だけで構成されたアンドロイドなのではないか。今ある記憶もすべて虚構ではないのか。

公安6課の中村部長とウィリス博士が9課にやってきて謎の義体を調べる。ウィリス博士いわくこの義体の中にいるゴーストこそ世間を騒がせる人形遣いだという。人形遣いは突如としてしゃべりだし一生命体として政治的亡命を希望するという。

人形遣いが生命体であるという証拠は何一つないと切り捨てる中村部長だが、いまだに生命を定義できていない現代科学では自分が生命体であることを証明できないという人形遣い。AIなのか?といぶかしがる荒巻に対し「AIではない私のコード名はプロジェクト2501。私は情報の海で発生した生命体だ」と言ったところで施設が爆破され人形遣いが入った義体を何者かに奪取されてしまう。

人形遣いを奪取したのは中村部長の公安6課だった。駐車場で中村部長とウィリス博士が乗ってきた車の重量がかなり重いことに気づいたトグサは何者かが光学迷彩をきて中村部長と一緒に9課に侵入したことに気づき草薙に報告。これは6課が人形遣いの義体を略奪するために仕組んだ偽装工作であるとにらんだ草薙は6課をあえて泳がせ追跡を開始。

9課のイシカワの調べで、人形遣いのいうプロジェクト2501とは外務省と米国企業が開発した外交干渉用の違法なハッキングプログラムであることが発覚する。プロジェクト2501は人形遣いの出現する前から存在するプロジェクトであることから、6課の言うような人形遣い捜査のためのプロジェクトなどではないことも明らかに。6課は人形遣いを「捜査」していたのではく、違法な外交干渉の発覚を恐れ「回収」しようとしていたと考えるとすべてつじつまが合うのである。

解説

生身が存在しないのにゴーストをもつ義体をみて草薙は動揺します。あの義体は自分に似ているのではないか。似てないと反論するバトーに対し草薙は言います。

私みたいに完全に義体化したサイボーグならだれでも考えるわ。
もしかしたら自分はとっくの昔に死んじゃってて今の自分は電脳と義体で構成された模擬人格なんじゃないかって。
いや、そもそも初めから私なんてものは存在しなかったんじゃないかって。

ここではっきりと自分の不安を自分の言葉で語ります。草薙の脳の一部は生身だろと諭すバトーですが草薙は止まりません。

自分の脳を見た人間なんていやしない、所詮は周囲の状況で私らしきものがあると判断しているだけよ。もし電脳それ自体がゴーストを生み出し魂を宿すとしたら、そのときは何を根拠に自分を信じるべきだと思う?

人形遣いは単なる自己保全プログラムに過ぎないという6課の中村だったが、一生命体として政治的亡命を希望した人形遣いは反論する。

それを言うならあなたたちのDNAもまた自己保存のためのプログラムに過ぎない。生命とは情報の流れの中で生まれた結節点のようなものだ。種としての生命は遺伝子としての記憶を持ち人はただ記憶によって個人足りうる。

たとえ記憶がまぼろしの同義語であったとしても人は記憶によって生きるものだ。コンピューターの普及が記憶の外部化を可能にしたときあなたたちはもっと真剣にその意味を考えるべきだった。

文字でまとめてみるとセリフでほとんど大切なことは語られていますね。草薙と人形遣いは似た存在であることが分かります。生殖機能を持たず死ぬこともできない人形遣いは自らを不完全な生命体と表現しています。対する草薙はあえて危険な海に潜り自らを死にさらすことで逆に生命体であるという実感を得ています。

人形遣いをただの電子情報であるとするならば、人間もまたDNA情報の集合体である。人は過去からの情報を引き継ぎ未来へと発展し情報を紡いでいく。生命がDNA情報を生成発展させていくことであるならば、電子情報を生成発展させてきた自分と何が違うのかというのが人形遣いの主張です。

人間は過去の記憶の集合体である。たとえその記憶が幻(間違った記憶)であったとしても人はその記憶を頼りに生きる。記憶を頼りに個人が成り立っているのならば、人形遣いも過去の情報の集合体であることからも人と同じではないかと言いたかったのだと思います。

人形遣いとの融合とその後

人形遣いを連れ去った6課の車を追跡した結果、街はずれの水没しかけた博物館にたどり着く。6課の車の上には光学迷彩を展開した多足型大型戦車が待ち伏せしていた。全身サイボーグの草薙だがさすがに戦車が相手では歯が立たない。銃撃戦の末戦車のアームで脳殻を破壊されそうになるが間一髪で対戦車砲をもったバトーが駆けつける。

人形遣いが回収されてしまう前に人形遣いの電脳に潜る草薙。なぜ人形遣いは9課にやってきたのか?人形遣いの目的は草薙との融合、完全な統一だった。それにより人形遣いは自分の子孫ともいえる多様化したデータを後世に残せるようになり死を得る、草薙は自身の殻に閉じ込められたゴーストをネットと一体化することができるという

バトーは人形遣いや草薙の顔に狙撃用のポインターが照準されていることに気づく。証拠隠滅を図る6課がヘリの上から狙撃しようと狙っていたが間一髪で草薙の頭部(脳殻)だけは死守した。

バトーのセーフティーハウスで目覚める草薙。なぜ少女の義体に自分を入れたのかとバトーに問い詰める草薙だが、闇ルートではそれしか手に入らなかったらしい。事件は表向きテロリストの犯行として発表、その見返りに外務大臣は辞任、6課の中村部長は査問、草薙素子の脳殻は行方不明ということででケリがついた。

人形遣いと何を話したのか、今も草薙の中にいるのかと問うバトーだが、ここには人形遣いと呼ばれたプログラムも少佐と呼ばれた女もいないと言いバトーの元を去る。いつか再開するときの合言葉は「2501」であることを約束して彼女は広大なネットの海へ消えていった。

解説

草薙素子は人形遣いと一体化します。目の前を天使のような光が舞い降りてくるのは新しい生命体の誕生を表しているのだと思います。人形遣いと呼ばれたプログラムも少佐と呼ばれた女もいないと言い残したのは新しい生命体になったということです。

ハリウッド版攻殻機動隊

アメリカでは3月31日に公開。日本では4月7日に公開。予告編を見る限りアニメ版とは全く違うでしょうが差を楽しむという意味もあってアニメ版を見返してみました。

実写版はちょっと街の風景が明るすぎる気がしますが。もっとブレードランナーみたいに薄暗くて蒸気とネオンでよく分からない怪しげな感じならいいのに思ったけどそれじゃまんまブレードランナーか。ビートたけしの荒巻が世界まる見え!テレビ特捜部でよくやる博士のコスプレにしか見えないから話が頭に入ってこないよ。

最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。この記事が役に立ったなと思ったらSNSでシェアしていただけるとうれしいです。